2012年6月29日金曜日

転移性すい臓がん へ抗がん剤新薬

すい臓がん治療の抗がん剤新薬「ナノプラチン」の治験が順調に進められている。

すい臓がん新薬「ナノプラチン」は、定評のある抗がん剤「シスプラチン」をミセル化することで効果を高めた新しい抗がん剤だ。多様ながんの標準治療薬と評価が高い「シスプラチン」は、すい臓がん肺がん卵巣がん子宮頸がん、膀胱がん等の治療に効果が高い。この「シスプラチン」をミセル化=「分子を集合させた塊状に特殊加工」することで、抗がん剤が体外に長く留り継続的に効果が発揮されるようになった。

すい臓がん新薬「ナノプラチン」の臨床試験は、すい臓がん標準治療薬の「ゲムシタビン」との併用療法で実施されており、現在は、アジア地域で第2相臨床試験へ進んでいる。

すい臓がん新薬は患者待望であるため、新薬「ナノプラチン」の開発成功が待望されている。

2012年6月28日木曜日

新がんワクチンなら化学療法とワクチンの両方の効果効能

ウイルスでがんワクチンを作り、血管に注射するだけでがん細胞を駆逐する新しい治療法が発見された。

ワクチンは、風邪のウイルスを使って製造され、ワクチンが血球に乗って免疫システムからの攻撃をよけつつ、がん細胞だけを攻撃する。ワクチンの基になるウイルスは風邪や胃もたれを引き起こすレオウイルス。レオウイルスは化学療法とワクチンの両方の働きを持ち、 がんを攻撃すると同時に抗がん免疫反応の効果もあるという。また、レオウイルスはがん細胞だけを攻撃し、健全な細胞には何もしない。これはがん患者が受ける副作用がほぼ無いということだ。

この研究が成功すれば、将来的にはがんはワクチン注射だけで治る病気になるかもしれない。

新しいがんワクチン治療は、ロンドンのがん研究所が発見し発表した。

レーザーと活性酸素で食道がん、胃がんを治療

患部に白血球を集めがん細胞を撃退

光線力学療法は、がん治療などに使われている治療法。PDTとも呼ばれ、光線力学的療法ともいわれる。 がん患者に対して、がん細胞に集まる性質のある薬品を投与し、弱いレーザー光を照射することで投与した光感受性物質から活性酸素を発生させ、この活性酸素によってがん細胞を駆逐させる治療法。

低出力のレーザーを使うため、正常組織へのダメージを最小限に抑えることが出来る。早期の食道がん胃がん・子宮頸がん・加齢黄斑変性に保険適用されている。内視鏡で病巣が確認できることが治療の条件。

近年は発生する活性酸素が感染症への治療効果も持つことが発見されて、適用範囲が増えつつある。

2012年6月27日水曜日

高精度3ミリで狙う最先端の放射線がん治療

初期のがんを3ミリ径のピンポイントで狙う、最先端のがん治療技術が開発された。

北海道大学が中心となって開発を進めてきた最先端の高精度X線がん治療機は、照射されるX線が3mmと従来の半分になっている。これによって、従来の直径6mm程度のX線ビームではがん細胞の周囲にある正常な組織を傷つけたが、新型機であればピンポイントでX線を狙い撃つことが容易になった。

さらに、照射機に装着されたアームで、上下左右前後の周囲の全ての方向から患者にX線を当てることが可能であるため、患者はあおむけの状態のままに体を動かさず治療を受けられ、負担が軽い。

従来の放射線治療は、35回も治療をする必要があったが、この新型の高精度X線治療機ならば、1cm程度のがんに対して、がん部位によらず約15分で治療が完了するという。

世界で初めての新型放射線治療機器は、海外の医療機関で臨床実験が進められる予定で、数年後には入院せずに切らないがん治療ができるだろう。

2012年6月26日火曜日

肝臓がん,すい臓がん,大腸がんの最新手術法のメリットと問題点

前立腺がんでは保険適用になったロボット手術は、他のがん手術に対しても合併症リスクが低下できることが分かってきた。そのため、胃がん、大腸がん、食道がん、肝臓がん、すい臓がんに対しても、ロボット手術で施術される症例が増えている。

例えば胃がん手術の場合、胃がん患部周囲のリンパ節を切除する際に電気メスの熱が原因で、膵臓が損傷を受け、て炎症を起こしたり、膵液漏になることがある。しかし、ロボット手術で膵液漏が発生するリスクは激減できる。執刀医が3次元画像で奥行きを把握しながら切除できるため、周囲の臓器の損傷を最小化できるのだ。

従来の手術法では一定の率で発生した合併症を、ロボット手術ではかなり減らせることが患者のメリットなのだ。問題は、自由診療の扱いとなるため、入院,検査の費用も全額が患者負担となり、総額で300万円以上の治療費が必要となってしまう。

今後は、前立腺がんだけでなく、胃がん、大腸がん、食道がん、肝臓がん、すい臓がんへの保険適用が待たれる。

2012年6月25日月曜日

パッチ貼るだけの新がん治療法

皮膚がん治療に、パッチを貼るだけの新しいがん治療法が開発された。全インド医科学研究所が発表した。

新治療法は基底細胞がんに適用される。基底細胞がんは、皮膚がんの中でも死の危険性は低いものの、患者数が最も多い皮膚がん。治療方法は放射性リン(32P)を使用したパッチを貼るだけで、手術や放射線照射などと比べて非常に安価で入院の必要もない。貼るだけなので、傷も残らない。

臨床実験では、顔に基底細胞がんのできた被験者10名を対象に実施された。皮膚がん患者の患部に治療パッチを3時間貼り、同様の処置を4日後と7日後に繰り返した。結果として、3か月後の検査では全員の基底細胞がんが消滅した。しかし、6か月後の再検査では、2名の被験者が再発した。

今のところはまだ実験が小規模なので、実用化までに広範囲な研究が必要とされている。悪質な皮膚がんとされるメラノーマ治療への展開が期待される新治療法だ。

2012年6月22日金曜日

乳がん、肺がんの転移を予防する新薬

がん細胞の転移に重要な役割を果たす酵素が特定された。

ADAM28という酵素が肺がんや乳がんの細胞で強く働いているおり、がん転移の際に働くため、この酵素の抑制で がん転移が抑制できるという。マウスの実験でこの酵素ADAM28の働きを阻害したところ、がん転移を劇的に減らせたのだ。

がん細胞は通常、血管に入るとほとんどが死滅するが、一部のがん細胞が生き残って他の臓器に辿り付くことでがんが遠隔転移してしまのだ。しかし、遺伝子操作で酵素ADAM28が働かないようにした肺がん細胞をマウスに注射すると、通常の肺がん細胞を投与した場合に比べ、肺への転移が6分の1に抑えられた。また、酵素ADAM28が働かないようにした乳がん細胞を乳房に注射した場合、脳や腎臓、肺、肝臓などへの転移も5分の1程度に抑制できた。

近い将来に、ADAM28の働きをコントロールする抗がん新薬が開発されることで、がんの転移を抑制できるようになる可能性が高まっている。

研究成果は、慶応大医学部のチームが米国立がん研究所雑誌に発表した。

肝臓がんの再発予防に必要なこと

肝臓がんは非常に再発しやすい、やっかいながん。完璧な治療で完快を得ても、年に15~20%という高い確率でがんが再発する。5年間での再発率は約80%にもなるのだ。

手術での切除や、熱してがん細胞を死滅させるラジオ波焼灼(しょうしゃく)術でがんを完全に取り去っても、残った肝臓はすでに慢性の肝臓病が進行して肝がんができやすい状態になっている。そのため、肝臓の他の場所にがんが再発し易いのだ。

肝臓がんの治療は、一旦克服した後の再発予防や最も重要なのだ。残念ながら肝がんの再発を直接防ぐ治療はまだ無い。

しかしウイルスを抑えることは肝臓の働きを改善しがんの再発予防に効果的だ。B型肝炎やC型肝炎では一度 肝臓がんができた後でも、ウイルスを抑制することで、長期的な再発予防効果が得られる。

将来的には、肝臓がんの再発を抑える有望な薬が開発中なので、新薬の登場を待ちたい。

それまでは、肝臓がんの治療後は50%のがん再発を前提に、定期的な血液検査とエコー、コンピューター断層撮影装置(CT)などの画像診断が不可欠だ。 がん再発を早期に発見することで、再度の根治的な治療が可能となる。

肝臓がんは、慢性肝炎・肝硬変に対する治療が進歩したことで、発症が回避できるようになった。また早期発見技術が増え、その後のがん治療技術も進展し、さらに肝がん根治後の肝炎・肝硬変の治療と画像診断を繰り返すフォローの徹底によって、治療成績が飛躍的に向上している。

50%のがん再発率にも恐れる必要は無く、治療が可能だと信じて、検診を欠かさないことだ。

2012年6月21日木曜日

分子標的薬新薬の著効で転移がんが消えた

日本人がかかるがんの中で最も死亡率が高い「肺がん」。
「肺がん」と喫煙との関係は指摘されていがタバコを吸わない人にも発生する「肺腺がん」が増えている。肺の奥にできる「肺線がん」は「肺がん」のほぼ半数を占める。初期症状が少なく、喫煙の習慣がない人や女性にも多く発症するがん。

治療は、抗がん剤による化学療法が中心だが、2012年3月「クリゾチニブ」という飲み薬の新薬が承認された。「クリゾチニブ」は肺腺がんの中でも、特定の遺伝子変異のあるタイプの患者に高い治療効果が得られる。

43歳の男性は、「肺腺がん」が発見されてから4年間抗がん剤治療と再発を繰り返してきた。しかし、抗がん剤「クリゾチニブ」を飲んで1週間で元気になり、会社にも毎日行けるようになった。 肺以外にも肝臓や骨、首などに転移がんが見つかっていたが、抗がん剤「クリゾチニブ」を飲んで2週間後には、黒く映っていた転移がんの多くが消えていた。

「クリゾチニブ」は「分子標的薬」と呼ばれるもので近年、世界中で研究が進んでいる。

一般的な抗がん剤は、体全体の細胞を攻撃すると同時にがん細胞の増殖を抑えダメージを与えるのに対し、「分子標的薬」はがんの原因となる遺伝子を突き止め、直接その細胞が死滅するように促す抗がん剤。肺がんだけでなく、白血病や乳がん大腸がんなどの治療に対しても開発が進んでいる。

抗がん剤「クリゾチニブ」は、日本の研究者が「ALK」というある特定のタイプの「肺がん」の遺伝子変異を発見し、ネズミを使った実験で同じタイプのがんを縮小させることに成功した実験結果から誕生した。

しかし、分子標的薬には注意点もある。

世界初の肺がん分子標的約イレッサは間質性肺炎と呼ばれる重い副作用を発症する患者が多く発生し、遺族が国や製薬会社などを訴訟したのだ。承認から2年後の現在では、「イレッサ」は「EGFR」と呼ばれる遺伝子変異のある患者にのみ治療効果があることが判明したため、まず患者の遺伝子変異の有無を調べてから、イレッサでの治療方針を決めるように改良された。

肺がん新薬として脚光を浴びる「クリゾチニブ」も効果が期待できるのは、「ALK」という遺伝子の変異を持つ肺がん患者だけなのだ。この治療適合性があるのは、「肺腺がん」患者のうち約5%。若い世代やたばこを吸わない人に多いとされている。

今後、効果の高い分子標的薬は次々と開発されるが、がん患者への適合性を遺伝子レベルで事前評価するオーダーメード医療、個別化医療の概念が不可欠となるだろう。

2012年6月20日水曜日

悪性リンパ腫へのSMILE療法効果を事前予測

血液のがんである悪性リンパ腫。
その中のNK細胞リンパ腫に対しては、通常の抗がん剤がほとんど効かないことが問題だった。しかし、5種類の抗がん剤を投与する「SMILE療法」が、NK細胞リンパ腫に対して治療効果が高いことが判明。さらにその治療効果の大小を事前予測する手法が解明された。白血球の減少や肺障害などの副作用が出ることがあるが、頻度が少ないことが特徴だ。

リンパ腫の腫瘍(がん細胞)に含まれるウイルスが血液中に出した遺伝子の量が少ないほど「SMILE療法」のNK細胞リンパ腫に対する治療効果が高いことが判ったのだ。しかも、その適正が合致すると副作用も少ないことも確認された。

名古屋大医学部の研究チームが解明し、米専門誌に発表した。

次世代がん治療の小型新型機が承認

副作用が少なく治療効果の高い次世代のがん治療、陽子線治療システムの新型機が米国FDAの承認を取得した。

既存の陽子線治療は、広大な設置面積が不可欠で、膨大なコストが問題だった。

新型の陽子線治療システムは、設置面積を著しく低減することに成功し、同時に信頼性を改善、既存のエックス線放射線治療システムと類似した管理方法や操作方法を用いる事で、経済性、操作性を向上した。そのため、導入コストや運営コストのが大幅に低減されたのだ。

小型で高精度で強力な陽子線ビームががんを治療する新型の陽子線治療システム「MEVIONS250」は、米国のメビオンメディカルシステムズ社が開発・販売している。今後は2014年までに、世界で12台以上のMEVIONS250 陽子線がん治療システムが出荷される予定で、ロバートウッドジョンソン大学病院(ニュージャージ州)とオクラホマ大学(オクラホマ州)への搬入が進行中だ。その後、フロリダやカリフォルニアの病院へ順次に導入が進められる。

高精度で切らないがん治療は今後ますます普及と低価格化が望まれる。

2012年6月19日火曜日

強いお酒と食道がんリスクと治療法

強いアルコールを飲む人が食道がんを発症しやすい理由は、アルコールを飲むと発がん性物質であるアルデヒドが息に出るからだ。そのため、喉頭がん、咽頭がん、食道がんになるリスクが高いのだ。

種類を飲むと顔が赤くなる人ほど、アルデヒドの処理効率が悪く、がんリスクが高いことが判っている。

食道がんが進行している場合の自覚症状としては、物が飲み込みにくい、引っかかるという症状が出る。食道がんの検査は、食道に色をつける内視鏡色素散布法などを受けることで、早期発見が可能だ。

食道がんの治療法は、
(1)内視鏡での手術
(2)開胸での手術
(3)放射線や抗がん剤での治療
などで対処される。

早期の食道がんは、手術でがんを切除する治療法が多い。開胸で食道がん手術をした場合には、入院から退院までの目安は約1カ月。もしも、がんに広がりあった場合には、手術後に放射線治療を追加するケースもある。体力の回復も考慮すると、仕事復帰までの目安はやはり数カ月間が必要となる。

2012年6月18日月曜日

10倍精度で抗がん剤の有効性と副作用を検査

がん治療向けの新しいDNAチップが2013年発売される予定。

鋼材加工で培った表面処理技術を転用することで、 がんの有無を調べる反応光が従来品より10倍以上鮮明に映る新しいDNA検査技術が開発された。新検査法では抗がん剤の副作用の有無なども高精度に調べられるだけでなく、チップサイズが小型化されて臨床現場で使い易くなっている。

開発した東洋鋼鈑では、 2013年を目標にがんの診断や抗がん剤の有効性・副作用の確認などに使うDNAチップ事業に参入する予定。

2012年6月15日金曜日

肝臓がん治療法の最新動向

慢性肝炎や肝硬変に最善の治療を施しても肝臓がんを発症する症例は多い。

肝臓以外の他の臓器は普通、がんの進行度により治療の方法が決まるが、肝臓がんは進行度だけでは治療法が決められない。肝臓が元気な状態であれば、大きながんでも手術で切除できる。しかし、肝臓がん患者の多くが、がん患部だけでなく肝臓全体が弱っていることが多く、その場合は手術が困難となる。肝臓全体の状態が輪悪い場合には、がんが非常に小さくとも治療ができないこともあるのだ。

肝臓がんを完全に治す=根治するには、手術で切除する以外に、ラジオ波焼灼(しょうしゃく)術という治療法が主流になりつつある。

ラジオ波焼灼(しょうしゃく)術は、いわゆる切らずに治す手術の一種で、 がん患部に針を刺してがん細胞を殺す経皮的な治療方法。肝臓に約1.5ミリ太さの電極針を刺し、がん細胞を100度に熱して死滅させる。ラジオ波焼灼術は、肝臓全体の状態が悪くても治療が可能だが、大きさが3センチを超える がんの治療は難しい。

手術もラジオ波焼灼術が行えない場合には、塞栓(そくせん)療法、抗がん剤による化学療法が選択される。塞栓療法とは、がん患部に栄養を送っている肝臓の動脈を閉じることで がん細胞への栄養を遮断し、兵糧攻めでがんを壊死させる治療法。

さらに先進医療としては、放射線の一種の重粒子線を用いてがん細胞をピンポイントに死滅させる治療が注目を集めている。重粒子線がん治療は、副作用の少なく、治療効果の高い近未来の治療法だが、導入施設がまだ少なく、治療費が約300万円と高額であることが問題だ。

近年の肝臓がんの治療成績は大きく改善されている。がんが早期に診断されるようになり、抗ウイルス薬など肝炎・肝硬変の治療効果が向上したことが貢献しているのだ。さらに、新しい治療薬の開発が相次いでいることで、肝炎が撲滅できれば肝臓がんの撲滅も近いと見られている。

2012年6月14日木曜日

転移乳がんに画期的な抗がん剤新薬

転移乳がんの抗がん剤新薬の治験が最終段階で良好な治療結果が報告された。

乳がんの抗がん剤新薬は、trastuzumab emtansine(T-DM1)。 T-DM1は、分子標的薬のトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)と細胞毒性薬のemtansine (DM1)から成る複合体で、米国食品医薬品局(FDA)の承認を受ける前に必要な最終段階(第3相試験)にある。

T-DM1を使用すると、標準療法よりも生存期間が改善されるとの研究報告が発表されたのだ。

米デューク癌研究所が実施さいた治験は、 1,000人近くの乳がん患者に下記のいずれかによる治療を行った。
T-DM1:ラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)と細胞毒性薬のemtansine (DM1)から成る複合体の新薬
XL:カペシタビン(商品名:ゼローダ)とラパチニブ(商品名:タイケルブ)

HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)陽性乳癌(がん)患者を治療するためにデザインされた米シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会で発表された。

治験開始の2年後、T-DM1群では65.4%、XL群では47.5%が生存していた。無増悪生存期間(PFS)中央値はT-DM1群が9.6カ月、XL群が6.4カ月であり、 T-DM1は、HER2過剰発現が確認された転移乳癌に対して有効な承認済みの治療法よりも有意に優れていると結論された。

なお、血小板数減少などいくつかの副作用はT-DM1群に多くみられたが、 XL群の方が、下痢,胃のむかつきおよび発赤、手掌および足裏の腫張および疼痛の発現率が高かった。

乳がん新薬T-DM1は、用量制限が必要な毒性がほぼ皆無で、転移乳癌患者にとっては画期的な抗がん剤新薬として期待されている。

2012年6月13日水曜日

声帯がん早期発見法と術後の声帯再生

声帯がんを内視鏡下手術で声帯を切除すると、強い音声障害が残ることが多い。

しかし、声帯の上側に位置する「仮声帯(かせいたい)」を用いた新たな再生法により、仮声帯が声帯の代わりになる治療法もある。また、頬の脂肪を用いた注入による声帯再生を行うことも可能だ。

早期の声帯がんは、他のがんと同様に症状が軽微で、診断も難しいことが問題だった。そこで開発されたのが、「ストロボスコープ」による声帯がん診断法。「ストロボスコープ」では、瞬間ごとに発光する光源を利用して声帯の動きを見ることができる。1秒間に100~1000回の超高速震動の声帯が、スローモーションのようにゆっくりと映し出され、その動きの変化によって約9割に対して声帯がんか否かの診断が容易に可能になった。

さらに特殊な光源を用いた「NBI」という診断法を取り入れると、組織や血管が鮮明に浮かび上がるために声帯がんの発見は確実となる。。ストロボスコープとNBIを組み合わせることで、前がん病変などの小さながん(腫瘍)を早期がんの状態で発見するべく、研究が進められている。

2012年6月12日火曜日

がん細胞死滅の仕組み解明でがん新薬へ

がん細胞だけを死滅させる仕組みの一端が解明された。これによって副作用の少ない新薬の開発が期待される。

愛知県がんセンター研究所が、人間などの哺乳類の細胞にある突起物「一次線毛」の働きを利用し、がん細胞だけを死滅させる仕組みを解明したのだ。

細胞の一次線毛は細胞に一つずつ存在しており、細胞分裂を起こす時は隠れている。アンテナを伸ばすように一次線毛が細胞から突き出ると、細胞分裂が停止するのだ。しかし、この一次線毛はがん細胞には存在せず、がん治療への応用が期待されていた。

研究グループでは人間の子宮頸(けい)がんの細胞と正常な網膜細胞をそれぞれ培養し、一次線毛の働きを抑え、細胞分裂するのに必要な酵素「オーロラA」をそれぞれの細胞から取り除き、2、3日置いて観察した。その結果、がん細胞の方は中途半端に細胞分裂が進み、異常な状態で停止した上、自浄作用が働き死滅することが確認できた。一方、正常な細胞は一次線毛が飛び出し、正常な状態を保ったまま細胞分裂が停止したという。

研究成果は米科学誌「ジャーナル・オブ・セルバイオロジー」に掲載。

9割以上に効果の肺がん新薬

肺がん治療の新薬は「ザーコリ(一般名クリゾチニブ)」を、効果の高い患者だけに投与するための新しい検査手法が開発された。

「非小細胞肺がん」の患者のうち、ALK融合遺伝子があるのは約3%。新薬ザーコリはこのALK遺伝子を持つ肺がん患者には著しい効果を示すが、ALK融合遺伝子の無い患者には効果が無い。

ALK遺伝子を持つ肺がん患者ならザーコリによる治療で9割以上でがん(腫瘍)が縮小するが、 ALK遺伝子の無い肺がん患者には、間質性肺炎や吐き気などの副作用で負担が増えるだけなのだ。従い、治療前に抗がん剤の適合性、つまりは「標的=ALK遺伝子」の有無を調べる正確な診断が必要となっていた。

しかし、従来の検査法はがん細胞の塊(組織)が必要で、腫瘍の位置が分かりにくい肺がん患者の検査は難しかった。

新診断法は細胞だけで確実にALK遺伝子の有無が検査できるため、効果の有る肺がんだけを治療対象に限定できる。効果の無い肺がん患者に無駄な治療をすることが回避できるのだ。

治療効果が見込まれる患者を選んで薬を投与する治療を『オーダーメード医療』と呼ぶ。不要な副作用に苦しむことなく治療効果の高い抗がん剤だけでがんが治せる時代を迎えつつある。

2012年6月11日月曜日

転移大腸がんの2次治療抗がん剤

転移性大腸がんの二次治療にベバシズマブの継続投与が有効と判った。

転移性大腸がんの一次療法として、ベバシズマブ+化学療法の併用治療に効果が得られずがんが進行した患者に、継続してベバシズマブを投与した化学療法を行うことで、全生存期間(OS)が延長することが確認された。さらに、ベバシズマブでの治療期間が延びても、ベバシズマブ関連の有害事象が増えないことも示された。

米国・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2012)での発表。

前立腺がん の生存率向上する治療法

前立腺がんの治療に際しては、アンドロゲン遮断療法(ADT)の単独療法よりも、アンドロゲン遮断療法(ADT)と放射線療法(RT)の併用治療が、生存率を向上させることが大規模な治験で判明した。

前立腺がん治療の研究調査の対象は、局所進行性前立腺がんもしくは限局性前立腺がん患者1205例で、調査期間は1995年~2005年の10年間。持続的ADT療法+RT併用療法(603例)、持続的ADT単独療法(602例)の結果が分析された。

これらの結果から、ADTと放射線療法の併用は、放射線療法が適切とされる局所進行前立腺がんの全患者に提供されるべきと結論付けた。

2012年6月8日金曜日

腎臓がん,肺がん,皮膚がん を著しく縮小した新薬

がん患者の免疫機能を強化してがんを治療するタイプの抗がん剤新薬 2種の臨床試験が成功を収めた。

一般的な治療法では効果が無かった非小細胞肺がん、メラノーマ(悪性黒色腫)、腎臓がん患者の4人に1人にがん治療で大幅ながん患部の縮小が確認された。

2種の抗がん剤は米国の薬品大手ブリストル・マイヤーズスクイブ(Bristol-Myers Squibb)が開発中の新薬。これらの抗がん剤新薬は、がん細胞を直接攻撃するのではなく、がん患者の体を蝕むがん細胞の保護膜を破壊し、免疫系の働きを助ける効能によってがんを治療する作用があるという。

新薬は、免疫細胞の表面に存在するタンパク質PD-1の結合を阻害する「BMS-936558」 (抗PD-1抗体)、がん細胞の表面に存在するタンパク質PD-L1の結合を阻害する「BMS-936559」(抗PD-L1抗体)。

「BMS-936558」の治験は、207人を対象に行われた。結果として、非小細胞肺がん患者10%、皮膚がん(メラノーマ)患者17%、腎臓がん患者12%に新薬の治療効果が確認された。

「BMS-936559」の治験は、296人を対象に行われた。治験結果では、非小細胞肺がん患者18%、皮膚がん(メラノーマ)患者28%、腎臓がん患者27%の腫瘍が著しく縮小した。さらに被験者の5~9%に6か月以上の病状安定がみられたという。

しかし、今回の治験では被験者の14%に深刻な毒性の副作用が確認され、うち3 人が肺炎で死亡した。また、副作用として大腸炎や甲状腺異常が確認されたほか、疲労感や肌のかゆみ、発疹といった症状を訴える患者もいた。

「PD-1とPD-L1が、がん治療における重要なターゲット」だということは強く示されたが、今後は、2つの治療薬について大規模な臨床実験へと開発が進められる予定。

2012年6月7日木曜日

魚で肝臓がんリスクを抑える

青魚やウナギが肝臓がんリスクを4割も低下させることが判った。

1995年から最長2008年まで岩手など9府県の45~74歳の男女約9万人を、追跡調査した国立がん研究センターが発表した。

多くの肝臓がんはB型もしくはC型の肝炎ウイルスの感染が原因で慢性肝炎を発症し、その後に肝臓がんへ悪化する。しかし、魚の油に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)などの不飽和脂肪酸を多く取っている人ほど肝臓リスクが低下することが判明した。魚の油に含まれているDHAなどの不飽和脂肪酸の抗炎症作用が、肝炎が肝臓がんに移行するのを抑えていると推察された。

結論として、青魚やウナギなどをよく食べる人は、あまり食べない人に比べて肝臓がんになるリスクが約4割低下できるとされた。

2012年6月6日水曜日

転移乳がんを画像で確認できる新技術

抗がん剤の効果の有無を投与前に簡単に目視できる新検査法が開発された。新検査法では、転移がんの発見も容易になる。

新検査法を開発したのは、国立がん研究センターと理化学研究所のグループで、まずは乳がんを対象にした実験で成功を収めた。

新しい検査法は、がん細胞だけを狙う抗がん剤に、特殊な放射性物質を組み合わせて微量投与し、PET(陽電子放射断層撮影)で撮影し、画像を観察する。画像上では がん細胞が放射性物質によって緑色に光るので容易にがん細胞が確認できるのだ。がん細胞が光るために転移したがんも容易に確認できる。

従来の検査では、がん細胞を体内から針で採取する必要があり、がん患者の負担も大きかったが、新検査法では苦痛も大幅に軽減され、転移がんまで視認できる。

今回の実験では、一部の乳がん患者に対して著効を示す抗がん剤「トラスツズマブ」が狙う細胞の可視化で成功した。

トラスツズマブは乳がん治療に用いられる特定抗がん剤だが、新手法によってがん患者へのトラスツズマブの効果効能を投与前に事前把握でき、乳がんの転移も確認できたのだ。

最近の抗がん剤新薬は投与開始前に、患者のがんタイプに対して薬の有効性を検査するために、体に針を刺してがん細胞を採取した検査が不可欠だった。今後は他の抗がん剤でも効用研究が進められる予定で、転移がんも含め、がん患者の体を傷つけずに適切な治療薬を選べるようになる。

転移がん細胞を撮影できる新技術

抗がん剤の有効性を投与前に容易に画像で可視化できる新技術が開発された。新検査法を用いれば、転移がんの発見は容易になる。

がんの新検査法を開発したのは、国立がん研究センターと理化学研究所のグループ。

新しい検査法では、 がん細胞だけを狙う抗がん剤に、特殊な放射性物質を組み合わせて微量投与し、PET(陽電子放射断層撮影)で撮影する。すると、がん細胞が放射性物質で緑色に光ることで容易に確認できるのだ。さらには、転移したがんまで、体内にあるがんが画像として可視化できる。

従来の検査は、がん細胞の一部を採取する必要があり、患者の負担が大きかったが、新検査法では負担が大幅に軽減され、かつ転移がんまで視認できる。

今回の実験では、一部の乳がん患者に対して著効を示す抗がん剤「トラスツズマブ」が狙う細胞の可視化に成功した。

トラスツズマブは乳がん治療に用いられる特定抗がん剤で、新手法によってがん患者へのトラスツズマブの効果効能を事前把握でき、乳がんの転移も確認できた。

近年の多くの抗がん剤は使用する際に、患者のがんタイプに対して薬の有効性を検査するために、体に針を刺してがん細胞を採取して検査が必要だった。今後は、転移がんも含め、がん患者の体を傷つけずに適切な治療薬を選べるようになるように、他の抗がん剤でも効用研究が進められる。

2012年6月5日火曜日

臨床試験で好成績の肺がん新薬

肺がん治療の抗がん剤新薬として開発中の「アファチニブ」臨床試験において、良好な治療効果を発揮した。標準化学療法(ペメトレキセド/シスプラチン)を受けた肺がん患者では半年を超える程度であった無増悪生存期間(がんの悪化が抑えられる期間)が、新薬アファチニブ投与患者では13.6カ月に延長された。

つまり、半年以上のがん抑制効果が得られたことを意味する。

特にEGFR(ErbB1)遺伝子に変異を有する肺がん患者に対する治療効果が顕著であったことが報告されている。

アファチニブによる肺がん治療は、がんが進行するまでの期間が延長されることによって、日常生活を制限する肺がんの諸症状についても、良好にコントロールすることができる。また、新薬アファチニブの効能は、呼吸困難(息切れ)、咳嗽、胸痛などの症状の改善も多く観察され、これらの肺がん症状の発現を遅らせるという効能も期待される。

今後はさらに治験が進められ、安全性の確認がなされる。

2012年6月1日金曜日

末期腎臓がん に効果のある抗がん剤新薬

腎細胞がん治療用の抗がん剤新薬を厚生労働省が5月31日に承認した。

新薬承認された抗がん剤は、インライタ錠1mg、同5mg(一般名:アキシチニブ、販売:ファイザー)。

効能・効果のある治療対象のがんは「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」とされている。アキシチニブは、腫瘍の増殖などに関与していると考えられる血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体1、2、3を選択的に阻害し、がん細胞の増殖を抑える効果があるとされている。治験では一次治療の抗がん剤に抵抗を示したがん患者に対して有効性、安全性が検証され、効果が確認された。

その腎細胞がん治療薬としては、経口のスーテントカプセルを販売し、mTOR阻害剤トーリセルもファイザーが販売している。

肝臓がんの発病原因と発症確率

肝臓の病気で一番やっかいな肝がん。

肝臓がんは原発性と転移性に分けられる。

転移性肝がんは、他の内臓にできたがん細胞が血液の流れに乗って肝臓に漂着し、そこで根を張り大きくなったがん。肝臓には胃、小腸、大腸、膵臓、脾臓(ひぞう)から血液が流れ込む門脈という血管があるので、消化器のがんが転移しやすいのだ。

肝臓にまでがんが転移してしまったがん患者は、原発である臓器のがんの進行度は末期がんであるステージ4に分類される。

原発性肝臓がんは肝臓自身の細胞から発生したがん

さらに詳細な分類として、肝臓の働きを担っている肝細胞から発生する肝細胞がんと、胆汁の通る管を作っている胆管細胞から発生する胆管細胞がんに分けられる。

肝臓がんの大部分の患者は肝細胞がんであり、通常「肝がん」というと肝細胞がんのことを指す。

日本人で肝臓がんのがん死亡率に占める割合は、男性では肺、胃、大腸に次いで4位、女性では大腸、乳腺、肺、胃、膵臓に次いで6位を占めます。肝臓がんは日本人に頻度の高いがんだと言えるだろう。

ところで肝臓がんは、健康な肝臓からはほとんど発生しない。肝臓がんは慢性肝炎や肝硬変などの肝疾患が悪化した結果として発症することが多いのだ。肝臓がんの原因となっている肝疾患は、ある統計ではB型肝炎が27%、C型肝炎が56%と、B、C型肝炎で83%に及ぶ。また、他の肝臓がんの原因としては、アルコール、非アルコール性脂肪性肝炎も影響が大きい。

なお、肝炎ウイルスと肝がんは非常に強い関連があり、B型またはC型の肝炎ウイルスキャリアの発がん率は、肝炎ウイルスを持たない人の100倍超とされている。肝炎ウィルスに対しては、インターフェロンやベータグルカンなどで事前の対策を怠らないことで肝臓がんが予防される。