2012年9月28日金曜日

FDAが直腸がん、結腸がん の新薬を承認

結腸直腸治療の抗がん剤新薬「スティバルガ」(一般名:レゴラフェニブ、製造:バイエルの)が米食品医薬品局(FDA)に承認された。治療対象は、既存の治療薬に不応性の患者向けとされている。

スティバルガは、がん細胞の成長を促す複数の酵素を阻止するマルチキナーゼ阻害剤に分類される抗がん剤。 FDAに承認された適応症は、他の治療薬による治療後に別の部位へ転移してしまった結腸直腸がん。治療サイクルは28日間で、うち21日間に錠剤として服用する。

承認の基となった治験結果は、患者760人を対象とした臨床試験での効果だ。

患者760人全員が結腸がんで標準とされる既存抗がん剤「アバスチン」「アービタックス」「ベクティビックス」による治療を受けた経緯があった。

そして新薬レゴラフェニブを投与した500人の患者群の平均生存期間は6.4カ月となった一方で、プラセボ(偽薬)を投与した250人の患者群は5カ月だったため、新薬によって生存期間が延長されたとされた。

スティバルガの月額費用は9350ドル (80円/USD = 約75万円)。バイエルは患者が治療費を払えるよう、金銭的支援を提供するプログラムを設立している。

新薬スティバルガはFDAの「優先審査指定」により承認された。 FDAの優先審査とは「既存の治療薬と比較して、治療上の進歩の可能性がある医薬品を優先的に審査するシステム」で、スティバルガの承認は結腸がん治療薬としてはこの数カ月で2番目。

FDAは8月にもサノフィが開発した転移性結腸直腸がん治療薬「ザルトラップ」を化学療法「フォルフィリ」との併用投与で承認している。

米国の疾病対策センター(CDC)によると、結腸直腸がんは米国人のがんによる死因では1位で、毎年5万人の米国人がこのがんで死亡する。日本、アジアでも食生活の西欧化で患者が増えているがんゆえに、新薬の日本承認も期待される。

2012年9月20日木曜日

子宮摘出したがん患者への子宮移植手術

子宮移植手術が世界で初めて実施された。子宮移植手術を実施したのは、スウェーデンのイエーテボリ大で、 16日までに2件の子宮移植に成功した。

移植を受けた2人の女性はいずれも30代。うち1人はがん手術で子宮を摘出した女性で、残る1人は先天的に子宮が無い患者だった。 子宮の提供者はいずれも患者の母だった。

手術は問題無く終了し、術後の患者の容態も良好、子宮を提供したそれぞれの母も体調良く、数日以内に退院の予定。

がん治療のために、子宮摘出や放射線治療が不可避の場合には精神的にもがん患者が苦しめられる。

既存の最先端の取組みとしては、卵子の冷凍保存で望みを繋げた。がん治療前に卵子を取り出して、極低温で冷凍保存しておき、希望する時期に体外受精を試みる取組みは多くの臨床例が報告され始めている。

今回の子宮の移植は全く新しい取組みで、今後の患者の経過が注目される。

2012年9月18日火曜日

肝臓がん,胃がん,乳がんへがん幹細胞を標的の新薬

がんが治り難く、再発しやすいのは、現在の治療では がん幹細胞が叩けていないからだと考えられている。がん細胞を生み出すもとである「がん幹細胞」を標的とした臨床研究が相次いで始まる。

慶応義塾大学などは胃、大阪大学は肝臓が対象で、いずれもがん幹細胞の表面にある物質の働きを抑える抗がん新薬の臨床試験だ。

慶大と国立がん研究センター東病院は、年内にも胃がん患者を対象にした臨床研究を始める。患者の体内に潜むがん幹細胞の表面にあり、抗がん剤などに対する防御能力を高める働きを持つたんぱく質「CD44V」に着目した。

マウスの実験では炎症を抑える薬「スルファサラジン」と抗がん剤を一緒に投与。たんぱく質の働きを抑え、がん幹細胞が死滅しやすくなった。増殖だけでなく、転移や再発も抑えられた。臨床研究ではまずスルファサラジンを投与し、効果や安全性などを調べる。

阪大では肝臓がんのがん幹細胞を対象にした臨床研究を来年に始める予定。 がん幹細胞表面の「CD13」という酵素の働きを抑える白血病治療薬「ウベニメクス」を、抗がん剤「5―FU」とともに投与する計画だ。マウスの実験では、がんは縮小して確認できなくなった。従来、5―FUを単独で投与し続けると効き目が徐々に薄れてしまうなどの課題があった。

一方、骨のがんや乳がん でも 「がん幹細胞」を狙った新薬開発へ基礎研究成果が続出している。国立がん研究センターでは骨肉腫のがん幹細胞の内部で働き、病状の悪化を招く微小RNA(リボ核酸)を3種類特定した。このうちの1種類のRNAの働きを抑えた実験では、抗がん剤が効きにくいがん幹細胞に対しても薬の効果が表れた。がん幹細胞の数が大幅に減るのを確認できたのだ。研究チームは動物実験を続け、3年後をめどに臨床試験(治験)を始める計画だ。

東京大学では乳がん幹細胞が増殖するために作る3種類のたんぱく質を見つけた。これらのたんぱく質はがん幹細胞の近くまで新生血管が伸びるよう促す役割を持っていた。この新生血管の働きを妨げることができれば、がん幹細胞を兵糧攻めにできるとみている。

これらの新手法に基づく新薬の抗がん効果が確認できれば、がん治療に大きな進展が期待できる。

2012年9月10日月曜日

新型の重粒子線がん治療は低価格!?

手術が困難ながんを、副作用少なく効果的に治療できる「重粒子線がん治療装置」の機能を高めた新装置の開発を始めた。新型の重粒子線がん治療装置では個々の患者の治療時間を半分以下に短縮できる。結果として、個々の患者の負担軽減となるだけでなく、施設全体で治療が可能な患者数が増やせる。これは設備の稼働率を大幅に向上できることから、個々の治療費を大幅に下げられる可能性が出てくるのだ。 重粒子線がん治療の効果は絶大であり、副作用の少なさも大きな優位点であったが、しかしながら、設備費が高額であるために治療費も高額で、約300万円という高額治療費が負担できる経済性が問われていた。

重粒子線がん治療を世界で初めて実用化し、1994年から治療を始めたのは放射線医学総合研究所(千葉市)。一般的な放射線治療と比較して、がん細胞を壊す力が極めて強く、体の深いところのがん細胞にも有効で、しまも、手前の他の臓器への影響=副作用が殆ど無いのが特徴だ。同研究所で年間約700人ががん治療を受けており、他にも粒子線医療センター(兵庫県)、群馬大でも同装置によるがん治療が拡がっている。

しかし、1回の治療に1時間以上かかる場合もあり、治療時間の短縮が課題だった。治療時間が長引く原因の一つには、現行の治療機器では重粒子のビームの向きを変えられないために、がんの形状や場所によって患者の姿勢を何度も動かす必要があったからだ。これは、体力の衰えたがん患者の体力的な負担でもあった。

新装置では、超電導磁石で作った強い磁場で重粒子線のビームの向きを自由に変えられるようにする。さらにビームを一筆書きのようにトレースする技術と組み合わせることで、複雑な形のがんでも患者の姿勢を変える必要なく継続して治療できるため、治療時間が半分以下の約30分にまで短縮できることが期待される。

新型の重粒子線治療設備は、費用が約30億円で3~4年後の完成を予定している。

新しい治療設備が稼働すれば、治療できるがん患者数が増え、それによって治療費の低下も期待できる。

高嶺の花であったかもしれない、重粒子線がん治療が、庶民にも身近な治療法として普及する日が近づいてきたかもしれない。