肝臓がん向け分子標的薬の開発への基礎研究が前進した。
がんへの特効薬として脚光を浴びている分子標的薬はがん細胞を狙い撃ちする抗がん剤だが、肝臓がんには、効果的な分子標的薬が開発されてはいなかった。 2007年に米国で再発性や進行性肝臓がんに対して分子標的薬が使われるようになったが、その予後は悪く特効薬とは呼べる効果が発揮されなかった。そのため、肝臓がんの分子機構の解明による新たな治療法や予防法の開発が強く望まれていたのだ。
肝臓がん患者の27例のDNA=遺伝子情報(ゲノム)を解読したところ、 DNA複製に関わるクロマチン制御遺伝子の異常が高率で見つかったのだ。
つまり、肝臓がんの多くは、クロマチン制御遺伝子の異常を抑制することで、がんの発症予防や癌抑制、またはがん転移を阻止できるのだ。いよいよ肝臓がんには、有望な分子標的薬が登場する素地が固まってきたと言える。
研究は、理化学研究所と国立がん研究センターなどの研究チームが実施し、科学誌ネイチャー・ジェネティクスへ発表した。