2012年5月16日水曜日

乳がん抗がん剤治療の効果高める新手法

「断食」が、がん治療の効果を高める"可能性"が示唆された。標準治療で効果が出ていないがん患者、抗がん剤治療を受けている進行がん患者には、意味の有る研究結果だ。

マウス実験が行われたのは、メラノーマ=悪性黒色腫、乳がん、神経芽細胞腫を発症しているマウス。それぞれに2日間を断食させた後に抗がん剤治療を実施し、がんの進行度を比較した。

結果として、断食しなかったマウスと比べ、断食したマウスは がん(腫瘍)の転移率が40%も低下もしたのだ。特に、神経芽細胞腫に関しては、断食後に化学療法を受けたマウスでは 42%が がんを再発せずに180日間生存したが、断食しなかったマウスでは全て死亡した。

がん患者への断食の治療効果を検討する"臨床試験"にはまだ及ばないが、抗がん剤治療の効果を高める一手法としての”可能性”が示唆されたと言える。つまりは、標準治療に効果が無い進行がん患者は、検討に値する新がん治療法とも。

米国 南カリフォルニア大学が実施したマウス実験の論文は、米国の医学誌「Science Translational Medicine」に発表された。

治療前に効果予測できる抗がん剤新薬とは

抗がん剤は、「従来の抗がん剤」と、「新規抗がん剤」と呼ばれる分子標的薬の2種類へ大別されつつある。

従来の抗がん剤は、がん細胞のDNAや骨格をつくるタンパク質を直接攻撃し、がん細胞を破壊することで治療効果を狙った。一方の、新規抗がん剤=分子標的薬は、がん細胞が増殖する中で重要な役割をしている分子を標的にして阻害し、 がん細胞の増殖を抑えることを可能とした抗がん剤。がん細胞を養う血管増殖を抑制する分子標的薬もある。

従来の抗がん剤は、吐き気、食欲低下などの消化器症状や、脱毛がほぼ確実に発現したが、分子標的薬はこのような副作用が比較的少ないとされている。

-> 分子標的薬の副作用対処法

また、治療効果を予測した上で、投与する薬を選べるという点も進歩したところです。大腸がん治療の分子標的薬では治療前に患者のがん細胞のKRAS遺伝子(がんの増殖に関わる遺伝子)を組織検査で調べる。KRAS遺伝子に一部変異を認める場合は、ある種の分子標的薬を投与しても治療効果が期待できないからだ。

治療前に検査を行うことで、不要な抗がん剤治療を避けることができることは分子標的薬の大きな特徴だ。現在、消化器がんで使用されている分子標的薬は、胃がんではハーセプチン、大腸がんではアバスチン、アービタックス、ベクチビックス、肝臓がんではネクサバール、膵臓(すいぞう)がんではタルセバなど。

それぞれ、点滴薬や飲み薬があり、分子標的薬の単独だけでなく、従来の抗がん剤との併用でも使用されている。

分子標的薬による抗がん剤治療は、外来通院で実施されることが多く、自宅で過ごしながら抗がん剤治療を受けることができるようになったため、入院することは少なり、生活の質を極力落とさない抗がん剤治療が可能となっているのだ。

全世界では、さらに分子標的薬の研究が進められているので、治療効果が高く、副作用が少ない分子標的薬がさらに開発されることは時間の問題だ。

分子標的薬の抗がん効果が高い症例とは

がん治療に登場している新しいタイプの抗がん剤「分子標的薬」。

がん細胞だけで過剰に働いている分子や、増殖や転移にかかわる分子を狙い撃ちするため、従来の抗がん剤に比べ正常細胞のダメージ=副作用が少ないとされる。しかし、実際に分子標的薬タイプの抗がん剤使用が広がると、想定外の副作用も認められるようになってきた。その中でも皮膚障害は非常に顕著な抗がん剤副作用なのだ。

消化器領域で現在、分子標的薬が使われているのは肝臓、胃、膵臓、大腸のがん。例えば大腸がんで使われているセツキシマブやパニツムマブは、がん細胞の表面に顔を出す「EGFR」というタンパクに結合し、増殖や転移を抑え込む。しかしEGFRは、皮膚や毛包、爪の増殖・分化にも深く関与しているため、その働きも同時に抑制され、皮膚障害が高頻度に現れる。ニキビに似た皮疹、全身の皮膚が乾いて亀裂が生じる乾皮症、かゆみを伴う掻痒症、爪の周囲が腫れて痛む爪囲炎などは、辛い副作用だ。

がんだけで働く分子を探すのはなかなか難しく、分子標的薬もまた正常細胞を傷つけてしまうのが現実。 だが、皮膚障害の強いがん患者ほど、分子標的薬の抗がん効果が高いという事実がある。そこで、副作用の皮膚障害にうまく対処しつつ、抗がん剤治療を継続することが治療の肝になるのだ。

既知の対処法として、抗がん剤治療の開始前から抗生物質の内服や保湿剤の塗布を予防的に開始し、開始後にはステロイドの塗り薬を適切に使うと、皮膚障害が軽減される。この基本的な抗がん剤対処法を知らない医師も多いので、がん患者自身からの啓蒙も不可欠なのだ。

2012年5月15日火曜日

乳がん、肺がんの骨転移へ骨折抑制の新薬

がんの骨転移で生じる骨病変を抑える抗がん剤新薬が発売された。発売された新薬は、デノスマブ(製品名 ランマーク、販売会社 第一三共)。1カ月に1度、皮下注射する。

がんの骨転移で生じる骨病変に対しては、骨粗しょう症治療に使われる骨吸収阻害剤ビスフォスフォネートしかなかった。比較試験で新薬デノスマブは、ビスフォスフォネートを上回る効果が確認された。

がんが骨に転移して起きる骨病変は、病的骨折などの危険を伴う。骨転移は前立腺がん乳がん、肺がんの三つのがん患者に多く発生する。

新薬は「分子標的薬」で、骨を吸収する破骨細胞の活動を活発化させる仕組みを妨げ、骨の破壊を防ぐ効果がある。多発性骨髄腫の骨病変にも適用できる。

2012年5月14日月曜日

すい臓がん 対策に最も有効な新技術

膵臓がんを治すためには、早期発見が最善策だ。全てのがんに共通する早期発見だが、特に膵臓がんでがん発見が遅れる理由は、膵臓が腹部の深いところにあり、厚みも無いために画像診断が難しいからだ。さらには胃や腸のように内視鏡で簡単に組織を調べられないため、早期発見が容易ではない。そのため、膵臓がんの多くががん発見時点で既に周囲に転移した末期がん となっている。「上腹部の不快感」訴えても胃炎と診断され、数カ月後に黄疸が出て痩せ細り、進行膵臓がんだと分かるケースが多発している。

そのため、膵臓がんは、死亡率が高く、がんの中でも特に治療が難しいとされている、膵臓がんの生存率を上げるには早期発見に尽きると言われている。膵臓がん5年生存率は約10%と低いために「最も治り難いがん」とされてきたのだ。

ところで、難治癌の膵臓がんでも、ステージ1=早期がんの状態で発見できれば、5年生存率は60%以上と高いのだ。早期がんで見つけることで、再発無しに完治できる患者も多い。

膵臓がんの早期発見法では、超音波診断ですい臓内の「主膵管」を観察する。すい臓内の「主膵管」は膵液を十二指腸に運ぶ管だが、「太く」なっていたり、「袋状の嚢胞」がある人は、膵臓がんへ移行する確率が高いことが検査の肝だ。

同手法を開発・推奨していr大阪府立成人病センターでは 1998年から超音波を使った膵臓がん検診を開始し、大きな成果を上げた。膵管拡張や膵嚢胞の患者1039人を平均5、6年間追跡して経過観察した結果、膵臓がんが17人にも発見され、このうち11人の膵臓がんを切除手術した。特筆すべきは、17人中7人(41%)がステージ0か1の早期がん状態で発見できたことだ。通常であれば、この早期がん段階ですい臓がんが発見されるのは、2%以下の低い確率であるので、膵臓がんの早期発見率としては非常に高いと言える。

超音波膵臓がん検査は、人間ドックなどで膵臓が腫れているなど何らかの問題が見つかった人を対象に、通常1.5ミリ程度の主膵管が2.5ミリ以上と太くっていないか、嚢胞ができてないかなどを検査する。所要時間は、20分前後。もしも、異常があれば精密検査として、造影剤を使った超音波検査や、膵液の組織への移行する。

同手法の成果と結果分析として、すい臓の「主膵管」に「拡張または嚢胞」のあった人は、異常の無い人よりも膵臓がんの発症リスクが約3倍高かった。さらに、両方の異常のある人は約27倍もの高いがんリスクが確認されて、年平均1%以上もの高い確率で膵臓がんを発症することも指摘された。従い、主膵管が太い人や嚢胞のある人は膵臓がんが発見されなくとも、高いがんリスクを念頭に6ヶ月毎の継続検診が勧められている。

開始当初は「超音波で膵臓を見るのは難しい」と否定的な意見も多かったが、実用性が明らかに証明されたことで今後は膵臓がんの早期発見手法としての定着が期待されている。

2012年5月11日金曜日

乳がんの発症・転移に化粧品成分が?

化粧品や食品に含まれる低濃度のカドミウムでも、乳がんを発症・転移するリスクが高まることが判明した。

カドミウムは体内に入ると、女性ホルモンのエストロゲンに似た作用を示すことがあるため、特定の化粧品に含まれることがある。低濃度でもカドミウムに慢性的に曝露された細胞は、高レベルのSDF-1というタンパク質が発生することが判明したのだ。このSDF-1というタンパク質は、がん(腫瘍)の浸潤および転移に関連する物質=がんリスク物質として既知なのだ。

化粧品以外にもカドミウムは農業用の肥料に添加されることも多い。食品も、化粧品も、がんリスクを避けるのに越したことは無いだろう。

新たな乳がんリスクに関する研究は、米ドミニカン大学カリフォルニア(サンラファエル)生化学准教授のMaggie Louie氏が、米サンディエゴにて開催された実験生物学(Experimental Biology)学会年次集会で発表した。

2012年5月10日木曜日

抗がん効果高める新カプセル素材技術

抗がん剤の効率的かつ効果的な投与方法が開発された。

同量の抗がん剤を投与しても、副作用最小化され、効果は倍増できるという新手法は、「フレークシェルカプセル」と呼ばれる微小カプセルを利用したドラッグデリバリシステム(DDS)。

ドラッグデリバリシステム(DDS)とは、がん患者の病理部位だけに薬物を運ぶという仕組みだ。ドラッグデリバリシステム(DDS)に不可欠なのは、マイクロメートルもしくはナノメートルサイズのカプセルで、このカプセルに薬物を封入することで、がんなどの病理部位だけに薬物を確実に送り込むことを狙っている。

旧来手法で、抗がん剤を体内へ投与しても、投与した薬物ががん患部へ到達する前に相当量が吸収・分解されてしまう問題があった。がん患部以外に抗がん剤が分散することが副作用の原因であり、がん患部への治療効果を低減してしまう。そこで、抗がん剤の放出持続時間を自在に制御し、薬剤の有効時間を数倍に延長できるカプセルが開発されたのだ。物質・材料研究機構(NIMS)が開発に成功した新開発のカプセルは、無機物のナノメートル厚のフレーク状物体「ナノシート」でできた伸縮自在のカプセルで、「フレークシェルカプセル」と呼ばれる。開発された無機物のフレークシェルカプセルでは、カプセルの大きさが簡単に調節でき、さらには薬物を通過させる孔構造の調整も容易である。つまり、希望の量の薬剤を内部に封入し、かつ、それを希望の速度でがん患部へ持続的に放出することができるのだ。がんの状態に合わせ、量や持続時間を自在に調節できることは、非常に優れた抗がん剤物運搬体と言える。

さらに、「フレークシェルカプセル」は、従来よりも多くの抗がん剤をカプセル内に封入できると同時に、抗がん剤の放出速度を抑えることができる。従来のカプセルに比べて、抗がん剤放出持続時間が格段に長くすることもでき、 1つのフレークシェルカプセルで数日間、持続的に抗がん剤を投与することが可能となった。

また、表面に特定のがん標的を認識できる抗体を結合させれば、特定の病的部位にのみ薬物を送り込む「がんミサイル療法」への応用も可能なのだ。

構造を自在に調節できるカプセルの開発によって、既存の抗がん剤によるがん治療にても飛躍的に治療効果を高められる可能性を秘めている。