注目度の高い最新がん治療の代表といえば「陽子線治療」だ。
一般的な放射線治療に使われるX線は、皮膚に近いところで放射線量がもっとも高くなり、体の深部に存在するがん病巣に対しては線量が低くなってしまう。しかし、陽子線によるがん治療では体の深いところで放射線量が高くなり、しかもがん病巣に留まる性質があるのだ。この性質によって、陽子線がん治療では、体内深部のがん患部にピンポイントで照射できるのだ。
X線による放射線がん治療が体へのダメージを与えて副作用が酷いのは、がん細胞以外の正常な細胞にも放射線を浴びせてしまうことが原因だ。陽子線がん治療ではこの副作用が劇的に低減され、がん患者体全体への負担も少なくてすむ。また、陽子線がん治療は、初期がんから末期がんまで幅広いがん患者を治療することが可能だ。ただし、がんの種類や大きさ・位置などによって効果が変わってくるため、陽子線がん治療を受ける前に綿密な診断が必要不可欠だ。
なお、食道がんには適用可能だが、 胃がんや大腸がんなど消化器系のがんは放射線を当てることで潰瘍が発生するリスクが高く、不適とされる。
陽子線がん治療の実際の治療では、病巣を狙い非常に精密なピンポイント照射ができるため、陽子線の照射前には体を固定する必要がある。陽子線の照射中に体を動かさないことが高いがん治療効果と低い副作用につながる。しかし、専用機器に横たわり陽子線を照射される実時間は、1回たったの2~3分程度だけだ。この間、痛みや痒みも殆ど感じることは無い。
そしてこの治療を週5日間、2~7週間続けるのが標準の陽子線がん治療課程となっている。したがい、基本的には入院の必要性が無い。治療期間が短いために患者の体力的な負担は非常に小さく、陽子線がん治療に合う症状と診断された場合には、治療の選択肢として十分な価値はあるだろう。
陽子線がん治療の最大の課題は高い治療費だ。患者の自己負担は、がんの種類、治療期間に関係なく約290~320万円とされる。
費用が高いのは、設備が大規模であるだけでなく、運営費用も非常に高いからだ。陽子線を発生させる治療機器だけで約50億円、運営費は電気代が月額で約1200万円必要なのだ。
陽子線治療は民間保険会社の先進医療特約の対象なのだ、もしも保険に予め加入しているなら、約300万円の治療費を自己負担することなく、 最先端のがん治療を受けることが可能となる。
遠からず公的な健康保険による治療対象となることが議論されており、がん患者からも強く望まれている。