抗がん剤の効果の有無を投与前に簡単に目視できる新検査法が開発された。新検査法では、転移がんの発見も容易になる。
新検査法を開発したのは、国立がん研究センターと理化学研究所のグループで、まずは乳がんを対象にした実験で成功を収めた。
新しい検査法は、がん細胞だけを狙う抗がん剤に、特殊な放射性物質を組み合わせて微量投与し、PET(陽電子放射断層撮影)で撮影し、画像を観察する。画像上では がん細胞が放射性物質によって緑色に光るので容易にがん細胞が確認できるのだ。がん細胞が光るために転移したがんも容易に確認できる。
従来の検査では、がん細胞を体内から針で採取する必要があり、がん患者の負担も大きかったが、新検査法では苦痛も大幅に軽減され、転移がんまで視認できる。
今回の実験では、一部の乳がん患者に対して著効を示す抗がん剤「トラスツズマブ」が狙う細胞の可視化で成功した。
トラスツズマブは乳がん治療に用いられる特定抗がん剤だが、新手法によってがん患者へのトラスツズマブの効果効能を投与前に事前把握でき、乳がんの転移も確認できたのだ。
最近の抗がん剤新薬は投与開始前に、患者のがんタイプに対して薬の有効性を検査するために、体に針を刺してがん細胞を採取した検査が不可欠だった。今後は他の抗がん剤でも効用研究が進められる予定で、転移がんも含め、がん患者の体を傷つけずに適切な治療薬を選べるようになる。